それって本当に石けん!? 意外と知らない石けんと合成洗剤の違い
カテゴリ:健康髪を洗う、体を洗う、顔を洗う、衣類を洗う、食器を洗う・・・私たちは毎日”洗う”という行為をしていますよね。何かを洗う時に使う「石けん」や「洗剤」。石けんは「体を洗うもの」「固形のもの」、合成洗剤は「衣類や食器を洗うもの」と何となく思っていませんか? 実はどれも正しいとは言えません。商品名が「●●ソープ」となっていても、石けんではないこともあります。知っているようで意外と知らない「石けん」と「合成洗剤」について解説します。
洗浄剤は「石けん」と「合成洗剤」の2種類
洗浄剤には大きく分けて「石けん」と「合成洗剤」の2種類があります。石けんも合成洗剤も、本来は混じり合わない水と油をなじませる界面活性剤※である点は同じですが、原料や製法、成分など石けんと合成洗剤は全く別のものです。石けん=固形、というイメージがあるかもしれませんが、液体や粉末の形状もあり、シャンプーや洗顔、ハンドソープ、洗濯用、台所用と用途も様々です。形状や用途の違いが石けんと合成洗剤の違いとは限りません。
※界面活性剤についてはこちら
石けん | 合成洗剤(合成界面活性剤) | |
原料 |
天然油脂 |
石油や天然油脂 |
製法 | ケン化法、中和法 | 化学合成 |
主な界面活性剤 | 【固形・粉石けん】 脂肪酸ナトリウム(石ケン素地) 【液体石けん】 ※石けんの界面活性剤は上記2種類のみです。 |
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム (別名:LAS) アルキル硫酸エステルナトリウム ポリオキシエチレンアルキルエーテル ラウリル硫酸ナトリウム ※その他、約2,000種類あります |
メリットとデメリット
石けんと合成洗剤のメリットとデメリットを理解した上で、自分に合ったものを選びましょう。
石けん | 合成洗剤(合成界面活性剤) | |
メリット |
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デメリット |
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ここを見れば簡単! 石けんと合成洗剤の見分け方
商品の裏書にある成分表示を見ると簡単に石けんか合成洗剤かを見分けることができます。洗浄剤には、「日用雑貨」と「化粧品」の2種類があり、成分表示の形式が異なります。日用雑貨の場合は「品名」を、化粧品の場合は「成分」を確認しましょう。石けんの場合は「洗濯用石けん」「石ケン素地」「カリ石ケン素地」など必ず”石けん”と表示されています。
【日用雑貨】洗濯用や食器洗い用、住居用など体以外のものを洗うもの
【化粧品】シャンプーやボディソープ、ハンドソープ、洗顔など身体を洗うもの
裏書表示例)
用途 | 石けん | 合成洗剤(合成界面活性剤) | |
家庭用品品質表示法 | 洗濯用 |
品名に「石けん」の表示 |
品名に「合成洗剤」の表示 |
台所用 |
品名に「石けん」の表示 |
品名に「合成洗剤」の表示 |
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薬機法(旧薬事法) |
シャンプー |
成分に「石ケン素地」「カリ石ケン素地」の表示 |
成分に「ラウレス硫酸Na」をはじめとする合成界面活性剤の表示 |
石けんの歴史
石けんはもっとも古くから知られている界面活性剤で、紀元前3,000年と推定されるシュメール(バビロニア南部)の粘土板に薬用として記されているのが一番古い記録です。石けんの起源は約1万年前とも言われており、人間が火を使うようになって、獣肉を焼いて食べ始めた頃、獣肉からしたたり落ちる脂と木の灰(アルカリ)が反応した土が汚れを落とす土として発見されたのが石けんの始まりと言われています。現在でも天然油脂とアルカリを反応させて石けんを作る点は約1万年前と変わっていません。天然素材を使った昔ながらの石けんは、その長い歴史が人や環境へのやさしさを証明しています。
合成洗剤の歴史
第一次世界大戦中にドイツは石けんの原料である油脂が欠乏し、石けんの製造ができなくなりました。そこで、石けんの代替品として石油を原料として合成洗剤が開発されたのです。日本では、1937年(昭和12年)に羊毛・絹用の洗浄剤として初めて市販されています。この頃は依然として石けんが洗浄剤の主体でしたが、第二次世界大戦後にアメリカの石油資本の生産増大、電気洗濯機の普及、アメリカ及びヨーロッパの硬水地区における石けんの欠点(石けんカス)などで、急速に合成洗剤が洗浄剤の主流に代わっていきました。アメリカでは1953年に、日本では1963年に合成洗剤の使用量が石けんの使用量を上回りました。つまり、合成洗剤が大量に使用され始めたのは、わずか50~60年ほど前と歴史の浅い物質なのです。