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【専門家コラム】傷は乾かさずに治す!?治りも早い「湿潤療法」

カテゴリ:健康, 家族・子育て

 

 子どもはちょっと転んでも派手に擦りむくことがありますよね。生傷の絶えない男の子は切実です(我が家の息子もよく怪我してきます)。野生の動物は、怪我をしたら舐めて治します。湿潤療法は、「うるおい療法」とも言われるように、傷を乾かさずに治す治療法です。体が本来持っている「自然治癒力」を最大限に活用します。
 一昔前は「傷は乾かして治すもの。ジュクジュクした汁は化膿したから出る」と思われ、傷を乾かす薬やガーゼでの治療がスタンダードでした。ところが、このジュクジュクした浸出液に傷を治すために必要な細胞成長因子が豊富に含まれていることが分かりました。
 このジュクジュクした汁で傷口を覆いながら治療すると、活発に細胞分裂が起こるので、傷が早く治ります。この汁を乾かさないよう、ぽたぽた垂れないよう、上手に吸収させながら治す、しっとりした素材の絆創膏やつるりとして貼りつかないシートが市販されています。ガーゼが貼りつく痛み(あれが一番痛い!)もなく、かさぶたができないので、ひきつれや跡も残りません。消毒は必要なく、むしろ有害と言われています。これから傷を修復しようとしている正常な細胞にダメージを与えてしまい、傷の治りが遅くなる可能性があるから。傷口は水道水でよく洗えば十分です。

※写真はイメージです

 怪我をしたらまず、洗って泥や砂ををきれいに取り除き、傷口にワセリンを塗り、乾かないように食品用のラップを貼るだけでも応急処置になります。ラップは蒸れるので汗臭いですが・・・。でも、この臭いも泡立てた石けんでやさしく洗えば大丈夫です。ちなみに傷は3日もすればジュクジュクが減り、皮膚が再生されてきます。
 自然治癒力を最大限に引き出して治療するこの湿潤療法。ナチュラルクリーニングと似ていませんか? 身近で安全な素材を使って、地球のもつ自浄作用を真似して掃除や洗濯をするところ・・・。
 そして、「消毒薬が生きている細胞にダメージを与えてしまう」という考え方も「毒性の高い洗浄剤を使うと、皮膚の機能や海の生態系にダメージを与えてしまう」ことと似ている気がします。

※写真はイメージです


 毎日傷口のシートを交換する際、「たった1日でここまで回復!?」と、人体の持つ再生力に驚かされます。「自然治癒力って素晴らしい!」とか言いながら、大喜びで子どもの傷口を眺めている私は、かなり怪しい人らしいです。余談ですが、この原理を利用して、細胞成長因子でシワを取る美容法もあるそうです。わざと皮膚に細かい傷をつけて、新しい皮膚の再生を促すそうです(興味あるけど、痛そう・・・)。
 怪我をしても、親がどーんと構えて「大丈夫だよ」って言えると、子どもはのびのび育つ気がします。「ツバつけとけば治る」はホントです。どこかの家の子みたいに、のびのびしすぎっ!と言われないようご注意くださいませ(苦笑)。

※写真はイメージです

  

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文・おき さちこ さん

おき さちこ さん
大学で天然物化学を専攻し、製薬メーカー、病院に薬剤師として勤務。安全で気持ちの良い生活法を提案する「ナチュラル家事」の講師として各地で活躍中。薬剤師、公益社団法人アロマ環境協会認定アロマテラピー検定1級、ハウスキーピング協会認定整理収納アドバイザー

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